☆バレエのための解剖学6☆
2015.06.17
X脚
ポワントを履いて膝が入っていてしなる美しい脚をX脚といいます。
バレエで使われているX脚は、一般的な解剖学、医学用語とは違います。
解剖学的なX脚は、つま先を揃えて立った時にうちくるぶしが離れている状態の脚をいいます。
バレエのX脚は、脚を1番ポジションにした時にかかとが離れている状態をいいます。
バレエのX脚は、解剖学的には「反張膝」といいます。
この反張膝は、膝が「入って」足が美しく見えますが、正しい筋肉の使い方をしないと膝を痛める原因となります。
この反張膝の状態を「過伸展」ともいいます。漢字の通り一般的な骨格よりも過度に伸展位に入っている状態なので骨に負担がかか
りやすいです。
反張膝、過伸展は関節が緩い人は誰でも起こりえます。しかしダンサーの様に全身の筋肉を使っている人は更に負担がかかってきます。
また筋肉のアンバランスの原因にもなります。
反張膝の状態で身体が引き上がっていないと、膝を後ろに押し込みふくらはぎに寄りかかります。
そのためバランスをとる為に重心は前に移動し、骨盤は前傾になり反り腰になります。反り腰になると肋骨はフレアし胸椎は固く詰まった状態になります。
この姿勢のままだと、ふくらはぎはいつもパンパンに張り、腹筋に力が入らず、胸は反っているので呼吸が浅くなります。
このような常に緊張した姿勢ではいずれ身体のどこかに痛みを感じるようになってきます。
では、X脚はしない方がいいのかと言うと、ダンサーにとっては脚の美しさを魅せる為には必要な要素です。
膝を押し込んでX脚の形だけを作るのではなく、身体を引き上げ続ける強いコアを作り上げていくことも重要ということです。
では、X脚の人が身体を引き上げていくにはどうしたらいいか。
ただ膝を押し込んでいる状態は重心が前にあることが多いです。
パラレルの状態で膝を少し緩めて重心を足の甲の上に移動してください。(本来、重心はかかと寄りですが、バレエの場合意識は足の甲の上に重心があるとすぐにルルベに移動しやすいと思います。)
そこから膝を「伸ばす」のではなく膝蓋骨を太ももの筋肉で持ち上げるように引き上げて下さい。よく太ももは柔らかくと言われていましたが、膝蓋骨が落ちてしまうので、「固める」のではなく、上に長く引き伸ばすように使います。
写真1 膝を押し込み膝蓋骨が落ちている状態
写真2 太ももを引き上げ膝蓋骨を持ち上げている状態
反対に尾てい骨は後ろではなく地面に引っ張られているような意識で前傾になっている骨盤を立ち上げます。この尾てい骨も押し込んでタックインするのではなく尻尾の先が少しだけ引っ張られているような意識です。
そうすると自然に下腹(コア)に力が入ります。
そこから胸を前に突き出さず、頭の重心を足の甲の上に置き、背骨で軸を作るように頭から一直線で長く上に吊り上げられているような意識で立ちます。
写真1 重心が前にあり骨盤が前傾し肋骨がフレアしている。
写真2 重心が後ろにあり骨盤が立ち上がり背骨がまっすぐの状態
長い間染み付いた身体の使い方はそう簡単に変化するものではありません。
繰り返し体に再教育していくことが重要です。
自転車に乗るのと同じで身につくまでは時間はかかりますが、一度覚えたら身体は反応してくれます。
諦めずに少しずつ少しずつ身体の再教育を行って下さい。
Angel R
ピラティス講師 川本直枝